大地の割れる日があるように
凍える風がお前の首を折る日もあるだろう
盗賊に襲われ頭を砕かれる日があるように
強い雨がお前をなぎ倒す日もあるだろう
見知らぬ女に剣を抜かれお前の背中の肉が引き裂かれる日があるように
見知った男が鏡を突き付けお前の死骸を見せつける日があるだろう
光の残るお前の瞳や
活発に走るお前の血を
ありとあらゆる汚物で埋めて
その上で舞う者さえいるだろう
しかし
豪雨の夜に歌う虫が
朽ちた木の根に住まう茸が
尚も生えてくるオリーブの新芽が
私に愛を教えてくれる
愛は不毛な大地に辛抱強さを与える
愛はフィヨルドに取り残された一本のパイン・ツリーにもう一晩乗り越えるための薄明を与える
愛は祖父の編んだチュージョの毛糸の一本に くすくす笑いが宿ることを教えてくれる
いつか死ぬ日まで生きるということを、愛は教えてくれる
大きな声で笑うということ
誰かを思い出し眠るということ
大きくも小さくもない、じぶんのからだを愛するということ
やがてすべてが終わったとき
お前は何一つ憶えていないだろう
真っ青な川に喪服のまま足を浸した冷たさと
月や星がどれほど輝いて見えたかだけを
お前の体が、代わりに憶えているだろう
死ぬその日まで生きた暁に
きっとお前はトンボに囁く
愛はどんな味がしたか
そしてそのトンボが死ぬ日まで生きたなら
山の向こうの来世のお前に
その話をしてくれることだろう